I Love Wine, I Love NYC

2021年から約1年間のNYC滞在日記。歩みは引っ越しました。詳しくはTwitterで

1/17/Martin Luther King Jr. Dayの日に

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1月の第3月曜日(今年は1月17日)はMartin Luther King Jr. Dayです。この日に少し私の経験を書きます。

英語の教科書などで「I have a dream」というフレーズで日本でも知られる市民権運動で最も有名なキリスト教牧師の方です。その方の功績やこの日がキング牧師の日になった経緯などは、毎日お世話になっているこちらのサイトを参照ください。

mikissh.com

今回のNY滞在前にアメリカに来たのは1988年になります。南部アラバマ州の小さな高校に数ヶ月ホームスティしました。👆の写真(Google mapからお借りしました)

CityDataによれば今でもこの群での外国人居住割合は1.5% 当時はその10分の1くらいでした。そんなところで今住んでいるNYとは違います。

(注)以下、今は黒人のことをアフリカ系アメリカ人やBlackを大文字で書くなどして読んでいますが👇当時の白人と黒人という対比の意味を込めて今回は日本語で黒人と書かせてください。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93744.php

 

行く前に父親の本棚にあった本多勝一の「アメリカ合衆国」(1970年文庫版は81年)

 を読んでいたので差別については少しはあるだろうくらいに思っていましたが、ハリウッド映画では白人と黒人の警官が同じ車に乗っているし、ハグしているシーンもあったのでそんなに深刻に考えないでいました。

しかし、今から30年前、日本がバブルで浮かれている時期に人口5000人の小さな町と公立高校(50%白人50%黒人)でみた景色は以下のようなものでした。

1)ホストマザーのメモ

ホームスティ初日「英語はまだ苦手なので、大事なことは紙に書いてください。辞書を引いてきちんと理解します」とホストマザー(白人)に伝えて渡されたメモに書いていたのは

○黒人と友達になってもいいけど、家には入れません。連れてこないこと

○黒人の車に乗らないこと

○黒人からもらったジュースや食べ物は絶対に食べないこと。とくにチューインガムには気を付けること

○学校の便座には座らないこと

他にも朝や食事の注意事項などありましたが、この4つは衝撃的でした。

2)学校にて

○ スクールバスは白人バスと黒人バスは別れていました。私が乗ったのは白人バス。遠足などで学校からでるバスも全て別れていました。(唯一部活では同じバスに乗りますが、それもホストマザーは嫌がりました)

○朝礼などで体育館に集まると、真ん中から真っ二つに白人と黒人が分かれていました。どうしようと戸惑っていると白人が手招きしてくれました。

○授業は一緒に受けます。ただ取る授業によってはほぼ白人だったり、ほぼ黒人だったりしました。数学は日本の方が進んでいたのでアドバンスクラスをとるとほぼ白人、英語はできなさすぎて、中学のクラスにいましたがここは半々。そして一番印象的だったのが、高校一年生のアメリカの歴史のクラスです。ほぼ8割黒人、2割白人でした。

3)歴史の授業

○歴史の先生は年齢の高い黒人の女性でした。アラバマ州で初めて黒人女性で教師になった方だそうです。静かに厳しい先生でした。

○この黒人女性の言葉で今でも覚えているのが、キング牧師や公民権運動の話になったときでした。

「これは私にとって歴史ではなく経験です」

と行進やデモに参加していたことを話してくれました。

4)小さな子供も

○歴史の授業でキング牧師のことについて知ったので、図書館で簡単に読めそうなキング牧師の文庫本を借りて、通学バスの中で読もうとしたら、仲良しでいつも隣に座りたがる小学校1年生の可愛いブロンドの女の子が

「なんでそんな本読んでるの!読んだらだめなんだよ」

て無邪気に質問してきました。

○ドイツ人の男の子が、黒人差別について白人に切り込んだ質問をしたときに白人学生は「だって、ただ違うから」と言いづらそうにしていたのが印象的でした。

○その後、ドイツ人の女の子と2人きりのときに、私の最初のホストマザーのメモの話をしたら、ドイツでも同じようなことがあると教えてくれました。日本のことも伝えました。

○黒人はアジア人が珍しいらしく、日本に黒人はいるのかと聞いてくるのはいいのですが、絶対に言ってはいけない「Nワード」を執拗に言うようにからかってきました。これには困りました。絶対に言いません。

○車でI時間半くらいで、都会にいけるのですが、友達と出かけたときに白人と黒人カップルがいて、それを睨みつけるように見ていた友人が印象的でした。

もちろん教会も別です。レストランも明確に別れてませんが、日曜の教会の後にいくレストランに黒人はいませんでした。ファストフードやスーパーは同じです。

 

30年以上前のアメリカの田舎の様子です。今がどうなっているかを知りたくて、帰る前に一度訪れたいと思っています。コロナが収束していますように。

今NYは日によってはマイナス10度になります。コロナ禍でホームレスもいます。マンハッタンを歩くと1ブロックで景色がガラッと変わります。こんな小さな街でもその境目が目で見えるようです。

これは私の(主観も入った)経験であり、覚え違いもあるでしょうし、何かをジャッジをするつもりはないのです。ただこの30年前にただ見た風景がその後の生き方に影響を及ぼしたのは事実であり、当時期間も短く、ネットや通信手段もなく、深く考える器もない10代で、ただ感じることしでしか知識を得ることができなかったなぁと、コロナ禍のマンハッタンで思い返しています。